リンカとは、プログラムを実行可能な形式にまとめるために、複数のオブジェクトファイルやライブラリを結合するツールのことを指します。
コンパイラがソースコードを翻訳して生成するオブジェクトファイルは、それぞれが独立した状態です。
リンカは、これらのオブジェクトファイルを一つにまとめ、外部ライブラリやシステムのリソースをリンクして、最終的な実行可能ファイル(エグゼキュータブル)を生成します。
#### リンカの役割
リンカの主な役割は、プログラムの各部分を結合し、必要な参照を解決することです。
具体的には、次のような処理を行います:
- **シンボル解決**: 各オブジェクトファイル内で使用される関数や変数(シンボル)の参照を解決します。
例えば、あるオブジェクトファイルで宣言された変数が、別のオブジェクトファイルで使用されている場合、リンカはその参照を正しく結びつけます。
- **アドレス割り当て**: 各オブジェクトファイル内のコードやデータに実行時のメモリアドレスを割り当てます。
これにより、プログラム内の関数や変数が正しくアクセスできるようになります。
- **ライブラリのリンク**: プログラムが使用する外部ライブラリを結合し、プログラムがそれらの機能を利用できるようにします。
リンカは静的リンクと動的リンクの両方をサポートしており、静的リンクでは必要なライブラリのコードを直接実行可能ファイルに組み込みます。
一方、動的リンクでは、実行時にライブラリをロードして使用します。
#### リンカの種類
リンカには、主に以下の2種類があります:
- **スタティックリンカ(静的リンカ)**: オブジェクトファイルと必要なライブラリをすべて結合し、一つの実行可能ファイルを作成します。
これにより、実行ファイルが単独で動作可能となり、他の外部リソースを必要としません。
- **ダイナミックリンカ(動的リンカ)**: 実行時に必要なライブラリをロードし、リンクを行います。
これにより、プログラムのサイズを小さく保つことができ、同じライブラリを複数のプログラムで共有することが可能です。
ただし、ライブラリが正しくインストールされていない場合、プログラムは動作しません。
#### リンカとローダ
リンカは、ローダと密接に関連しています。
ローダは、実行可能ファイルをメモリにロードし、プログラムの実行を開始する役割を担います。
リンカが生成した実行ファイルは、ローダによって適切にメモリに配置され、実行されます。
動的リンカは、ローダの一部として機能し、実行時に必要なライブラリをロードしてリンクを行います。
#### まとめ
リンカは、プログラムの複数の部分を結合し、実行可能な形式にまとめるための重要なツールです。
シンボル解決、アドレス割り当て、ライブラリのリンクといった処理を通じて、プログラムが正しく動作するようにします。
リンカの役割と仕組みを理解することで、プログラムのビルドプロセス全体をより深く理解できるようになります。